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あざといままで

私は物思いに耽る。

幼稚園に通っていたころ、これまでの人生で一番楽しかったなー。
たんぽぽ組のときも、そら組のときも。
あのころの私は、まだ“あざとさ”がなく、
ちゃんと挨拶する素直な良い子だったなー、と。

でも、本当は違う。
私、幼い頃からちゃんと、きっちり、あざとかった。

挨拶をしていたのも、大人たちが挨拶すると褒めるからだったし、
先生の「これ、どうすればいいか、わかる子いる〜?」って問いに
手を挙げて答えたときも、へへんと優越感を感じていた。
先生が「すごいね〜そんなやり方があったね!」って感心したときも、
本当に感心しているというより、子どもに答を探させて
褒めてやる気を出しているんだろうと思っていた。

もっと非道い記憶がある。幼稚園にお母さんがきて、
親戚に不幸があったから、これからお母さんと広島にいく?って聞いたとき、
私は、この「緊急な用事で教室の外から呼ばれる」状況に酔っていた。
一度こういう特別なことで注目されたかったのよねって。
さらに信じがたいことに私は、「おばあちゃんが家にひとりになると
可哀想だから私は行かない」と言い放ち、母を帰したのだった。
今でも覚えてる。これは、おばあちゃんを思いやって言ったわけじゃない。
ただ、人前で意外なことを言いたかっただけ。人とは違うコメントしたかっただけ。
ちゃんと気を遣っている風にみせて、賢げな子どもに見せたかっただけ。

子どもがみんな無垢な天使だというのは嘘かもしれん。
私は子どもの頃から小狡くて利己的で自意識過剰だった。

いま、大人になって。仕事で文章を書いていると、自分のあざとさが鼻につく。
本当にきれいな心をしている人は、あったことをそのまま書けば人の心を打つ。
小狡い私は、それらしく、それなりに書けるだけ。
自分が書いた仕事上の文章を読むと、
手堅くまとめたなぁとは思うけど、それ以上でもそれ以下でもないと思う。

しかし、悲観してばかりもいられない。
無垢な人があざとくなれても、
元々あざとい人は無垢にはなれないと私は思う。
あざといならあざといまま生きるしかない。

私は裏表のない人間が好き。いい人でも、悪い人でも。
いい人に見えて実は悪い人や、悪い人に見えて実はいい人よりも、
首尾一貫、いい人か悪い人であるほうがよっぽど好き。
だから自分も、あざといならばせめてそれを隠さないでいようと思う。
皮肉なことに、あざとさを隠さないことが
唯一、私の中であざとくない部分かもしれないのだから。

…ってな具合にうまいことまとめて筆を置く。
by aco_325 | 2006-06-05 14:13 | 日々の暮らし