気軽な笑いが八割、文句が二割くらいです。


by aco_325

世界遺産 秘めた力 〜災害列島・日本より〜

3月23日放送の「NHKスペシャル」は見応えがあった。
「世界遺産 秘めた力 〜災害列島・日本より〜」

日本にある世界遺産を災害から守ってきた先人の知恵について、
科学的な検証をまじえて紹介していた。
取り上げられたのは宮島の厳島神社、白川郷、
日光の東照宮、奈良の薬師寺。

中でも私が強く興味をひかれたのは、宮島の厳島神社だ。
つい先日、私が訪れた際も、台風被害の跡が残っていた。
「この神社は台風がくるたびに壊されるよなぁ。何度も何度も」。
そんな無責任なことを言ったり思ったりしていた。
でも今回、番組を見てとても驚き、認識を新たにした。

内容はこのようなものであった。

厳島神社は、800年前に建てられた。
そして今日まで、幾度と無く台風などの被害に見舞われた。
しかし、実は、被害を受けているのは神社前方の平舞台などであり、
奥まった場所にある本殿が被害をうけたことは一度もないというのだ。
それはなぜか。理由はいくつかある。

まず、立地。
厳島神社は山に囲まれた場所に建てられており、風から守られている。
そして、山の一角に一箇所だけ低く、くびれた部分があり、
そのくびれから下方の谷へ向かって一気に風が吹き下ろすのだが、
その経路にあたるのは、神社の前方である平舞台などの「一部分だけ」なのだ。
本殿は経路から逸れているため、風による被害を受けないのだ。
逸れるように「計算して」作られたのではないか、
というのが専門家の推測であった。

次に、神社の構造。
神社の前方には、平舞台と呼ばれる大きく平らな場所がある。
平舞台は、長細い板が7、8ミリの隙間をもって、「いかだ」状に組まれている。
その「いかだ」状の床が5つ組み合わさっているのが平舞台だ。
潮がひいた時分に、平舞台の床下にカメラが入った映像を見ると、
いかだは、地面(満潮時は海底)に据えられた
基礎となる石の上に、「置いて」あった。
つまり、いかだは固定されておらず、石の上に乗っている状態なのだ。
どうしてこのような構造なのかというと、
大波が来た場合、いかだごと波に浮かぶようにしてあるという。
いかだが波に浮かぶことで、神社全体が壊れてしまうことを防ぐのだ。

また、5枚のいかだ同士もがっちりつながれてはおらず、
うまく外れて壊れるようになっている。
がっちり固めてしまうと、全体が壊れてしまうけれど、
これなら、被害が全体に及ばない。
厳島神社は壊れることを想定して作られていたのだ。
いわば、壊されているんじゃなくて、自ら「壊れて」いるのだ。

さらに、いかだの大きさや、7、8ミリの隙間にも、大切な役割があった。
海に浮かぶ施設、「メガフロート」を研究する人たちが、
その力を現代に活かそうと、縮小版の平舞台で実験し、検証していた。
実験の結果、海から大波が来た場合、
大きないかだは、波を打ち消す働きをするということがわかった。
波よりも小さな板であれば、波間に翻弄されてしまう。
けれど、波よりも大きな板であれば、波の力を抑えるのだ。
また、いかだに大波が寄せると、いかだの隙間から水が噴き出す。
これもまた、波の大きさを打ち消す効果があるという。
現に、台風の際には、平舞台の隙間からブシューッと、海水が出ている
様子が観察されたという。

このように、平舞台は、神社の前方で大波の力を弱める働きをしていた。
そして、平舞台に続いて、祓殿、拝殿、本殿と続くのであるが、
祓殿や拝殿の床は、隙間こそないものの、床板が柱と固定されておらず、
やはり波の動きに応じて上下に動くことで、波の力を弱めていくという。
そして、波が本殿へと届く頃には、その力はほとんど威力を失っており、
そのために本殿は災害を免れてきたのだという。

なんと!  800年も前にこんな知恵が!

すべて壊さぬものかと頑なに守るのではなく、
ここぞという一点(本殿)だけは堅く守る、
そのためには、わざと自ら「壊れてみせる」という発想。
波に逆らうのではなく、ゆらりゆらりと波にのるようにして、
実は波の力を弱め、最後は力を静かに制してしまうという手法。

こんな発想と手法を800年も前に実践した人に感服!
この柔軟で賢い考え方に、私もあやかりたい。
今度、宮島にいったら、このことを考えながら
厳島神社をじっくりみてみようと思う。
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by aco_325 | 2005-03-29 14:00 | レビューなど